65歳以上も雇用保険は適用される?
65歳以上の従業員も雇用保険の適用対象となったことや、複数の事業所に勤務することで要件を満たすと雇用保険適用が可能に…
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従業員の成績などに応じて支給する賞与は、労働基準法 で定められた賃金の一種 です。しかし、なかには「賞与が発生したときの社会保険料の計算方法がわからない」という方もいるのではないでしょうか。
賞与の社会保険料を計算する際は、保険の種類によって異なる保険料率を使う ため、正しい方法を知っておくことが大切です。
そこで今回は、賞与にかかる社会保険料の概要や計算方法を解説したうえで、賞与に社会保険料がかからないケースや注意点も紹介します。
賞与とは、従業員に月々支払う給与とは別に支給する「一時金」を指す言葉です。名称はボーナスや夏期手当、年末手当などさまざまで、支給する企業・時期によって異なります。
なお、労働基準法や厚生年金保険法では、賞与は必ず支給すべきものとして義務付けられてはいません。就業規則もしくは賃金規定で定めた場合にのみ、支払い義務が発生します。
賞与に社会保険料がかかる理由は、法律によって規定されているためです。
社会保険料が大幅に引かれるようになった背景には、「事業主側の保険料逃れの防止」が挙げられます。以前は、賞与にかかる社会保険料は種類を問わず、すべて1%となっていました。
しかし、給与を減らして賞与の支給額を増やし、社会保険料の負担を軽減する事業主が増えたため、2003年に総報酬制が導入されました。この制度導入により、給与と賞与の合計額をベースとした標準報酬月額で、社会保険料を算出する仕組みへと変化したのです。
ここからは、賞与の社会保険料を計算する方法を4つの保険料別に紹介します。
健康保険料を計算する際は、標準賞与額(※1)に保険料率をかけ合わせたうえで、事業主と従業員が労使折半(半分ずつ負担)するため、2で割ります。
※1:賞与額の1,000円未満の端数を切った金額のこと
つまり、計算式にすると、以下のようになります。
健康保険料(円)=標準賞与額×健康保険料率÷2
なお、事業主が加入している健康保険組合によって、保険料率には違いがあります。例えば、中小企業が多く加入する協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合は、都道府県ごとに保険料率が異なることが特徴です。
以下で、協会けんぽ加入の場合の健康保険料をシミュレーションしてみましょう。
50万円×10.09%÷2=2万5,225円
※参考:全国健康保険協会「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」(沖縄県)
厚生年金保険料を計算する際は、標準賞与額に保険料率をかけ合わせ、前述した健康保険料と同じく労使折半するため、2で割ります。計算式にすると、以下のとおりです。
厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率÷2
なお、保険料率は年金制度改正に基づいて、2004年より徐々に引き上げられていましたが、2017年9月以降は18.300%に固定(※2)されています。
※2:厚生年金基金加入者を除く、一般・坑内員・船員の被保険者に適用
以下では、標準賞与額が50万円で、一般の被保険者の場合にかかる厚生年金保険料をシミュレーションしてみましょう。
50万円×18.300%÷2=4万5,750円
※参考:日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)」
介護保険は、40歳以上65歳未満の方が被保険者(第2号被保険者)になり、介護保険料は40歳になる月から支払わなければなりません。
以下の計算式のとおり、標準賞与額に保険料率をかけ合わせ、労使折半するため2で割って算出します。
介護保険料=標準賞与額×介護保険料率÷2
なお、協会けんぽの介護保険料は、2022年3月分(5月2日納付期限分)以降、1.64%です。
この保険料率を踏まえて、標準賞与額が50万円の場合の介護保険料をシミュレーションすると、以下の介護保険料になります。
50万円×1.64%÷2=4,100円
雇用保険料の計算では、標準賞与額ではなく賞与額を使い、事業主負担と労働者負担の割合が異なります。計算式にすると、以下のとおりです。
雇用保険料=賞与額×雇用保険料率
また、2022年度の雇用保険料率は、段階的に保険料率が変更される点に注意しましょう。例を挙げると、一般の事業では下表のように労働者・事業主の負担率、雇用保険料率が期間ごとに分けて設定されます。
①労働者負担 | ②事業主負担 | ①+②雇用保険料率 | |
---|---|---|---|
2022年4月1日~2022年9月30日 | 0.3% | 0.65% | 0.95% |
2022年10月1日~2023年3月31日 | 0.5% | 0.85% | 1.35% |
一般事業者で50万円の賞与を与える場合、2022年10月1日~2023年3月31日分の雇用保険料率(事業主負担)でシミュレーションすると、以下の結果となります。
50万円×0.85%=4,250円(事業主負担)
ここからは、賞与に社会保険料がかからない3つのケースを紹介します。
賞与支給月の末日前に従業員が退職する場合は、健康保険や介護保険、厚生年金保険の控除対象になりません。これは、健康保険や厚生年金保険から抜ける資格喪失月が、賞与支給月に該当する場合は保険料を徴収しないためです。
一方、月末に退職した場合は、翌月1日が資格喪失月あるいは資格喪失日となります。つまり、資格喪失月に対して賞与支給月が前月となり、社会保険料控除の対象になるため注意しましょう。
従業員が月末日前に退職するケースで、賞与にかかる社会保険料は雇用保険と労災保険に対してのみです。
育児休業中、もしくは産前産後休業中の従業員に賞与を渡す場合、日本年金機構に届け出ることで、賞与・報酬の健康保険・厚生年金保険料が免除されます。
この免除を適用するには、従業員が休業の旨を事業主へ申し出たうえで、事業主が以下の申出書を日本年金機構へ提出することが必要です。
産前産後休業の場合:産前産後休業取得者申出書を提出
育児休業の場合:育児休業等取得者申出書を提出
産前産後休業や育児休業の取得をサポートする企業は増えつつあるため、スムーズに実現できる体制を整えることが必要でしょう。
大入り袋として臨時的に支給した場合は、社会保険料控除の対象にならない可能性があります。そもそも大入り袋とは、一定の売上を超えた際に企業が支給するボーナスのことです。
例えば、クリスマス手当などを臨時的・恩恵的に支給した場合は、社会保険料の徴収対象から外れます。以下のように、賞与および報酬の対象にならないことがポイントです。
賞与にならないケース:支給回数が年に3回以下で、臨時的に発生する場合
報酬にならないケース:就業規則などで大入り袋の支給基準が明記されていない場合
上記のケースに当てはまる場合は、社会保険料がかからない可能性が高いため、しっかりと確認しておきましょう。
賞与の社会保険料では、以下2つのポイントに注意しましょう。
健康保険・厚生年金保険の標準賞与額は、それぞれ上限が決められています。
・健康保険:年度累計額が573万円
・厚生年金保険:1ヵ月あたり150万円
健康保険料を例に挙げると、7月に400万円、12月に300万円の賞与を支給する場合、7月分は400万円の賞与に対して健康保険料がかります。一方、12月分は賞与のうち173万円のみに健康保険料がかかります。
このように、標準賞与額の上限が定められている点に注意して、社会保険料を算出しましょう。
従業員に賞与を支給した事業主は、賞与支払届の提出が義務付けられています。賞与支払届とは、社会保険料の算出・納付で必要な書類のことで、賞与支給から5日以内に、管轄の年金事務所もしくは事務センターへ提出しなければなりません。
提出が遅れた場合は、賞与支払届の提出に関する催告状が届きます。催告状が届いたら、すみやかに賞与支払届を提出し、保険料を納付しましょう。
賞与の社会保険料を計算する際は、健康保険料や介護保険料など、それぞれの種類に応じた計算式や保険料率を用いらなければなりません。また、従業員が育児休業中の場合や大入り袋として支給した場合などは、社会保険料がかからないケースもあるため、しっかりと確認しておくことが大切です。
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