社労士は必要ない?社労士を雇うメリットと依頼すべきケースを解説

社労士は必要ない

企業では、社労士と顧問契約を結んだほうが良いのか、疑問に感じている担当者は少なくないでしょう。

社労士との顧問契約は、人事や労務に関する問題やトラブルを未然に防ぐなど、さまざまなメリットがあります。

この記事では、社労士と顧問契約を結ぶ必要性とメリット、必要ないといわれる理由、依頼すべきケースについて解説します。

社労士と顧問契約を結ぶ必要性とメリット

社労士は、人事・労務の分野に精通したプロフェッショナルです。労務関係の書類作成や、コンサルティング業務などを通して、企業の発展に貢献してくれます。

社労士に依頼できる業務は、知識とスキルがあれば無資格でも対応可能です。しかし、これらに対応するには、複雑かつ頻繁に改正される人事労務に関する法律や制度の最新情報を常に把握していなければなりません。

したがって、少ない労働力で多くの成果を上げるには、人事・労務の専門家である社労士への依頼が適切だといえます。複数の業務を社労士に任せれば、効率的な時間の使い方ができます。

このように、円滑な事業運営を行なううえで、社労士の必要性は大きいでしょう。

社労士が必要ないといわれる4つの理由

なぜ社労士は必要ないといわれるのでしょうか。その理由について解説します。

依頼業務が少ない場合もあるから

事業を始めて間もない事業者や規模の小さい企業では、社労士への依頼・相談事項は頻繁に発生しない場合がほとんどです。社労士と顧問契約すると、顧問料として毎月支払いが必要なため、依頼・相談事項が少ない場合は非効率という場合もあるでしょう。

ただし、助成金の申請をしたい場合や労働災害などが起こったときなど、スポットで社労士に依頼するメリットはたくさんあります。具体的には、助成金の申請などの煩雑な手続きを任せられることや、問題やトラブルを早期解決できることなどです。

そのため、日常的な依頼業務は少なくても、何かあったときにすぐ相談できる社労士を持っておくのは大切だといえるでしょう。

労務管理システムを使えば良いから

昨今は、給与計算や社会保険の申請手続きなどに対応した、労務管理システムが販売されています。ソフトを使いこなせれば、一部の業務は社労士に依頼するよりも安く済ませられるため、経費削減になるでしょう。

ただし、入力内容は入力者自身や担当部署で確認する必要があり、チェック体制がしっかりしていないと間違いが生まれる可能性もあります。さらに、ずさんな管理・処理で税金や社会保険料を間違ってしまうと、会社の信用に関わるため注意が必要です。

事務を内製化しているから

社労士が必要ないといわれる理由として、「事務は内製化しているから」というのもあります。経理担当者などに労務などに関する手続きや給与計算を任せているため、必要ないと考えられているのです。

しかし、属人的な社内での事務作業は間違いが生まれやすく、間違いに気付かずにそのまま手続きや処理を継続してしまう可能性もあります。特に、専任でない部署が対応している場合は注意が必要です。

税理士に委託できるから

売上管理や経理サポートを目的に税理士と契約している場合、別途費用を払うことで給与計算も行なってくれることが多いため、社労士は必要ないといわれることもあります。

しかし、税理士は社会保険のプロではありません。手続き代行もできないなど、労務に関しては対応できない領域があります。税理士と社労士は同じ「士業」ですが、税理士は税金の専門家、社労士は人事・労務管理の専門家です。

社会保険に関する手続きは税理士ではカバーできないため、社労士に頼んだほうがよいでしょう。

社労士に依頼するメリット5選

前項での内容を踏まえ、ここでは、社労士に依頼するメリットについて解説します。

本業に専念できる

まずメリットとして挙げられるのは、社労士に各種手続きを委託すると本業に専念できることです。

社内の従業員が各種手続きを行なっている場合、時間と労力を本業以外の業務に割くことになってしまいます。売上に直結しない業務に人件費や労力を割くのは、効率を考えると望ましくありません。

労働に関する手続きは煩雑で多くの作業が必要になるため、可能であれば社労士に依頼するのがよいでしょう。

外注化によるコスト削減

人事・労務に関する手続きは、社労士に外注すると安く済ませることができます。

自社で担当の社員を雇って対応させたほうが良いと考える方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。自社で社員に人事・労務に関する処理や手続きを担当してもらう場合は、その社員のマネジメントや教育にコストがかかります。

さらに、企業で新しく社員が雇用されて社員数が増えていくと、社会保険の手続きや給与計算などの事務作業は確実に増えていきます。業務が著しく増えた場合は、担当社員を増員する必要が生じるため、社労士に外注したほうが結果的に経費削減につながることがあります。

また、人事・労務に関する処理や手続きを外注する場合は、必要な作業のみ外注することも可能です。

労使トラブルを防げる

社労士によって労務環境の適正化を図ることで、労使トラブルを未然に防止できるメリットもあります。

たとえ顕在化していなくても、労務に関するトラブルはどの会社にも多少なりとも存在しているものです。労使トラブルが表面化すると企業は社会的信用を失い、大きな不利益を被るおそれがあります。

また、人事労務に関する法律や制度は複雑で、そのうえ頻繁に法改正が行なわれるため、知らないうちに法律違反を犯してしまっていることもあるでしょう。

そのため、労務に関するプロである社労士に外注し、労務に関するトラブルを未然に防ぐことが重要だといえます。

助成金制度を有効活用できる

利用可能な助成金制度をもれなく活用できるのも、社労士に依頼するメリットです。

助成金制度は要件の変更等が頻繁にあり、その都度正しい内容を把握しなければなりません。このため、担当者にとってはかなりの負担になります。

また、本業を行ないつつ最新情報を入手して理解するのは難しく、申請期限が過ぎてしまうこともあるでしょう。

社労士と顧問契約を結べば、迅速に助成金に関する最新情報を得られるため、助成金制度を活用しやすくなります。

専門的な視点でのアドバイスが受けられる

社労士の専門的な視点でアドバイスが受けられるのも、社労士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。

社労士は労務や保険、年金などの悩みに関する相談を受ける専門家です。社労士に相談すれば、第三者の視点から客観的なアドバイスが受けられ、問題の早期解決が期待できます。

また、行政の調査(年金事務所は定期的な調査があります)に対して、アドバイスが受けられますので、安心して調査に臨む事ができます。

そして、従業員とのトラブルの対応方法について普段から相談しておくと、危機管理への対応力を高めることにもつながるでしょう。

社労士に依頼できる「3つの業務」

社労士を雇うメリット

社会保険労務士法では、社労士の業務として3つの業務を定めています。ここでは、社労士のおもな業務内容と相談内容の例を見ていきましょう。

事務代理(1号業務)

1号業務と呼ばれる事務代理業務では、行政機関に提出する各種申請書や届出書の作成・提出代行を行ないます。

具体的には、労働・社会保険などへの加入・脱退手続き、健康保険関係の給付手続きなどが挙げられます。

下記は、1号業務の相談内容例です。

・助成金の申請をしたい
・労働・社会保険関係の書類作成を外注したい
・従業員とのトラブルを解決してほしい

1号業務は社労士の独占業務であり、法律で社労士のみに認められているものです。また、裁判外紛争手続代理業務も1号業務に該当します。

裁判外紛争手続代理業務とは、労使間の裁判外紛争の代理人を務めることで、特定社労士のみ対応可能です。この業務では、企業と労働者との間で意見が対立しトラブルが起こった際に、仲裁や調停、あっせんといった方法で解決を図ります。

上記のとおり、裁判外紛争手続代理業務に対応できるのは特定社労士に限られますが、確かな知識をもとに、労働問題のプロとして必要な手続きを迅速に行なってくれます。

法令に基づく帳簿書類作成(2号業務)

2号業務では、労働基準法により企業に作成が義務付けられている、雇用契約書や賃金台帳、労働者名簿や等の作成を行います。

下記は、2号業務の相談内容例です。

・賃金台帳や労働者名簿を作成してほしい
・就業規則、雇用契約書などの作成を外注したい

賃金台帳・労働者名簿・出勤簿などの法廷三帳簿や就業規則の作成代行は、社労士の独占業務です。

労働基準法では、企業が労働者を常時10人以上雇用する場合は就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならないとされています。

参照:e-Gov法令検索「労働基準法 第九章 就業規則(作成及び届出の義務)第八十九条

コンサルティング(3号業務)

3号業務の内容は、人事・労務に関するコンサルティングです。企業の抱える問題点や経営状況を把握し、指導・アドバイスを行ないます。

下記は、3号業務の相談内容例です。

・優秀な人材を確保したい
・人事・労務に関わるトラブルを防止したい
・賃金体系や人事評価制度を見直したい
・従業員のメンタルヘルス対策をしたい

近年は、働き方改革などで労働環境の整備が重要視されるようになっています。そのため、企業はどのような人でも平等に働けるよう、さまざまな制度を整えたり就業規則を整備したりしなければなりません。

ブラック企業と呼ばれないためにも、最新の法律をもとに社内の制度設計を慎重に行なうべきでしょう。

コンサルティング業務は社労士の独占業務ではなく誰でも行なえますが、社労士に依頼すれば、プロによる人事・労務に関する指導・アドバイスが受けられます。

労務管理の専門コンサルタントとして、唯一法律で認められている社労士に相談すれば、企業が抱える悩みはスムーズに解決できるでしょう。

社労士に依頼すべき5つのケース

社労士依頼

社労士に依頼すべき、代表的な5つのケースを見ていきましょう。

従業員がいる

社労士に依頼すべきなのは、従業員がいるケースです。1人でも従業員がいる場合は、専門家である社労士の力を借りるべきでしょう。従業員がいると、労働・社会保険の手続きが発生し、給与計算を行なう必要が生じます。

最新の法律に則った就業規則の作成や適切な労務管理は、個人事業主であっても法人であっても、避けて通れません。日常的に社労士へ相談したい事案も発生すると思われるため、雑務から離れるためにも社労士に依頼すべきでしょう。

法人である

法人の場合は、従業員がいなくても社労士に依頼するメリットがあります。

法人化すると、経営者に対する役員報酬の支払いが必要になり、給与計算業務が発生します。その他、社会保険への加入などの手続きもしなくてはなりません。

自身で問題なく手続きなどを行なえる場合は継続的な顧問契約は不要ですが、急に必要が生じたときに相談できる社労士は確保しておくのがおすすめです。

今後、従業員を採用する可能性がある場合は、管理体制を整えておくという意味でも、早めに社労士へ相談しておきましょう。

会社が急成長している

会社が急成長している場合も、社労士に依頼すべきケースの一つです。

会社が急成長すると従業員が急増して、労働・社会保険の加入などの手続きや給与計算に手が回らなくなってしまうことがあります。社内で対応しようにも、スタッフの育成には時間とコストがかかるため、社労士に外注したほうがよいでしょう。

前述したように、従業員が常時10人以上となると、就業規則の作成をしなければなりません。就業規則の作成を行なうには、人事・労務に関する知識や専門的な情報が必要なため、社労士に依頼したほうが安全です。

社労士に依頼して万全の就業規則を整えれば、従業員とのトラブルを未然に防げるうえ、時間と労力の削減になります。

人事・労務スタッフを雇用する予定がない

人事や労務の専任スタッフを雇用しない場合も、社労士に依頼すべきでしょう。

人事・労務の専任スタッフがいない場合、労務管理が行き届かずに労働トラブルが発生することは珍しくありません。従業員数が10人以上になると、ハラスメントなどの従業員間トラブルは徐々に増えることも考えられます。

トラブル対処や人事・労務の事務作業に貴重な時間をとられないようにするためにも、専門家によってトラブルを未然に防ぐよう、対策するのがおすすめです。

ヒトに関する業務全般を合理化したい

ヒトに関する業務全般を合理化したいと考えている場合も、社労士に依頼したほうがよいでしょう。

ヒトに関する業務を社労士に依頼すれば、経費を縮小でき、生産性は向上します。人事・労務の業務を自社で実施した場合と比べて、社労士に依頼するとコストは3分の1程度になるといわれています。

ヒトに関する業務の規模が膨らんできたと感じる場合は、社労士に相談するのがおすすめです。

まとめ

社労士は人事・労務の分野に精通したプロフェッショナルです。

社労士が請け負うことのできる業務には、1号業務と呼ばれる事務代理業務、企業が作成しなければならない書類作成を行なう2号業務、人事・労務に関するコンサルティングを行なう3号業務があります。

コスト削減や労働問題の発生防止、最新情報の共有、人事・労務に関するプロの目線での指導・アドバイスなど、社労士に依頼するメリットは複数あります。社労士に依頼すると本業に注力できるのも、大きなメリットといえるでしょう。

従業員がいる企業や法人組織では、さまざまな観点から社労士に依頼するのがおすすめです。また、急成長している企業や人事・労務の専任スタッフがいない企業、ヒトに関する業務全般を合理化したいと考えている企業も、社労士に依頼したほうが良いといえるでしょう。

社労士は、人事・労務に関する業務を合理化できるうえ、問題やトラブルを未然に防ぐのに役立ち、企業の発展に貢献してくれる存在です。ぜひ一度、社労士の雇用を検討してみてはいかがでしょうか。