65歳以上も雇用保険は適用される?

 65歳以上の従業員も雇用保険の適用対象となったことや、複数の事業所に勤務することで要件を満たすと雇用保険適用が可能になるなど、最近の法改正による変更が良く分からない。企業の担当者としてどのように適切に対応できるかを知りたい、今回は、2017年1月から雇用保険加入者となった65歳以上の労働者と、2022年1月から複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者の取り扱いについて、解説します。

創業40年 沖縄の社会保険労務法人クローバー

社会保険労務士法人 クローバー (sr-clover.or.jp)

□65歳以上の従業員も雇用保険の適用対象者に

65歳以上の労働者の雇用保険の適用が拡大され、2022年1月から複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者にも適用される事となりました。

 また、特定の法人を対象に一部の雇用保険手続き(被保険者資格取得・喪失届など)は電子申請が義務付けられています。(2020年4月から)

□高年齢被保険者に対して企業に求められる手続き

・被保険者資格取得の手続き

 65歳以上の従業員を雇用した場合には、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークへ提出します。

 尚、65歳未満の雇用保険加入者が65歳に達した後も雇用を続けた場合、自動的に高年齢被保険者に切り替わるため、新たな手続きは必要ありません。

・被保険者資格喪失の手続き

 65歳以上の従業員が退職した場合には「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークへ提出します。

・高年齢者雇用状況等報告の提出

 高年齢者(55歳以上の者)を雇用している場合、毎年6月1日時点の高年齢者の雇用に関する「高年齢者雇用状況報告」を行わなければなりません。(従業員20人以上の事業所が義務となります)申告は申告用紙の返信、又は電子申請でも可能です。

□雇用保険料の計算方法

・保険料の計算方法

 65歳以上の労働者も雇用保険の加入義務が発生してから2020年3月31日まで、高年齢被保険者は保険料の支払いが免除されていました。

 しかし、同年4月からは、他の雇用保険被保険者と同様に保険料を納める事となりました。

・雇用保険料の計算対象となる給与

 雇用保険料の保険料は、毎年4月に厚生労働省が発表する雇用保険料率によって変わります。

総支給額に下記の雇用保険料率をかけて算出します。  

例 一般の事業の場合

例えば、基本給220,000円、資格手当10,000円、残業10,000円、交通費10,000円で総支給額を250,000円とします。

      250,000円×6/1000=1,500円(労働者負担)

      250,000円×9.5/1,000=2,375円(事業主負担)

雇用保険料は毎月固定的な社会保険料と異なり、欠勤や残業等で総支給額が変われば、保険料もそれに合わせて変わります。

           

・雇用保険料の徴収

雇用保険に加入した月の給与から徴収する為、例えば給与の締め日が月末の場合には、次の月で徴収します。

□マルチジョブホルダー制度への対応

・マルチジョブホルダー制度とは

従来の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用の見込みの適用要件を満たす場合に適用されます。

 これに対し、マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の適用対象者の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。

・雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用対象者

①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること

②2つの事業所(1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であるものに限る)の労働時間を合計した1週間の所定労働時間が20時間以上であること

③2つの事業所のそれぞれの雇用の見込みが31日以上であること

※雇用保険に加入できるのは2つの事業所までです。また、2つの事業所は異なる事業主であることが必要です。(3つ以上の事業所で勤務している場合には2つを選択することになります)

□週所定労働時間が10時間から雇用保険加入へ (原則全労働者対象)

マルチジョブホルダー制度とは別に、2028年(令和10年)10月1日より、全労働者(学生等の一部を除く)を対象に、週の所定労働時間が現行の20時間以上から10時間以上へ変更となり、雇用保険加入の適用が拡大されます。(令和6年5月10日成立)

■まとめ

高年齢被保険者とは、65歳以上の雇用保険に加入している労働者の事をいいます。また、65歳未満の雇用保険被保険者が65歳以上に達した場合、自動的に高年齢被保険者となります。新たな手続きは必要ありません。そして週20時間未満労働でも、複数の事業所で勤務している場合には、雇用保険に加入できる可能性がある事を知っておきましょう。

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